夏の終わり

自分は人生における恋愛という要素をこれまで軽視しすぎてたのかもな、と思う一方、あのひととの関係を「恋愛」という枠で考えていたことがそもそも間違っているのかもしれないとも思う。あのひとの求めるものとおれの心のありかたはどこでずれてしまったのか。
あのひとは、夏の終わりの、二度目のデートが最高に楽しかったと言っていた。それ以降は、どこかで、おれがあのひとの思うような人間ではないのかもしれないという不安を常に抱えていたのだと言っていた。そのことに4か月近く気づかなかった時点で、おれはあのひとときちんと向き合うことができていなかったのかもしれない。こんなにすてきなひとがもしかしたらおれに好意を抱いてくれているのかもしれないという期待で浮き足だって、あのひとをちゃんと見られていなかったのかもしれない。すべてはもう遅すぎてなにがほんとうかわからないけれど、あのひとが最高に楽しかったと言ってくれた一日に、おれが生まれてはじめてだれかと生涯をともにしたいと考えたことだけはほんとうだ。それ以降ずっとすれ違っていたのだとしても、すくなくともあの日だけは、気持ちは通じていたのだと、信じたい。