ひとの強さ

あのひとに会いに行くときによく乗っていた路線の電車に乗るだけで胸がしめつけられるような気分になる。あのひとと出会ってからもうすぐ3年、別れてからでももう2年以上経つというのが信じられない。自分の時間がほんとうに止まってしまっている。なにごともなかったように日々を過ごすことがこんなに苦しいのか、という思いが毎日沸き出てくる。
ひとつの失恋(という言葉で片付けられるのかもわからないけど)をこんなに引きずるのはおれにとってはじめてのことで、ほかになにも考えられないくらい毎日苦しい。なんとか「ふつう」の範囲を逸脱しないように取り繕うだけでへとへとになっている。おれ以外のひとたちが、はるかに若いときにこんな苦しさを経験し、それを乗り越えて生きているのだとしたら、みんなどれだけ強いのか? そして、その経験を避けながらこの年齢まで生きてきたおれはどれだけ弱いのか? と考えるようになって、自信というものがまるで持てなくなってしまった。あのひとはおれの自信過剰なところ、自己顕示欲が強いところが好きだと言ってくれたけど、そんなおれはもう、いないのだ。