シンクロ

あのひととつきあっていた時期、おそらく苦しかったタイミングはずれていた。まずあのひとが苦しみ、つぎにおれが苦しんだ。ふたりの関係にほぼ未来がないとわかってからもう会わないと決めるまでのバッファの期間は、きっとふたりとも苦しかった期間だと思うが、それでもふとしたときに笑いあえることがあった。きっとその時間がヒントだったのだ。別れてからあのひとがだれかと出会うまでの時間、おれが動けば、苦しいなかでもいっとき安らげるような日々を過ごすことができたはずで、そうすればいまとちがったいまがあったはずだ。こことよく似たここでない世界があるとして、ほんとうの世界があちらであるならば、そこでのおれが別の選択をして、あのひとといっしょにいてくれたら、すこしは希望なのかもしれないと、すこし思う。