いもたこなんきん

昨日は昼食で注文したセットにちょっとしたデザート扱いでサツマイモのシロップ漬がついていて、あのひとのことを思い出した。あのひとは焼き芋が好きだったし、おれにも何度か焼いてくれた。焼きたての熱々を食べるのもおいしいけれど、冷たく冷やすとより甘さを感じられるようになるから、冷やして食べるのがおすすめだと言って、出社するおれに持たせてくれたこともあった。それはふたりで家庭をもつときの予行演習のようで、おれはありえないくらいの幸せを感じていた。でもいま思えばそのとき、あのひとはもう、ふたりの未来がないことをほぼわかっていたはずなんだ。いったいどんな気持ちでおれに芋を焼いてくれていたんだろうか?きっとその答えを訊く機会ももう、ない。