季節の記憶

あのひとといっしょに過ごした時間のうち、どの季節がいちばん幸せだったろうか。夏の終わりに、ほんとうにただ食って飲んで歩いて話しているだけの一日か。秋に鎌倉でこの世の終わりのような日没を見たときか。冬にはじめて朝までいっしょにすごしたあの旅か。どれも宝石のようで記憶のなかで光っているけれど、記憶のなかにしかないという事実が刺さって、苦しい。