こころあたり

あのひとと週末の時間をほぼぜんぶいっしょに過ごしていたころ、ある時期から催しものを目的とした外出が極端に選択されなくなった。あのひとは、たとえばお互いの知人に会ったときの、まだふたりがどうなるかわからない段階で既成事実的な先入観を避ける意味だと言っていて、それは、ふたりのことはまずふたりで考えるのが筋だというあのひとの考えかたのあらわれで、おれはそういうあのひとの考えかたがとても好きだったのだけれど、寂しくもあった。ほんとうはその寂しさの意味をつきつめて考えるべきだったのだろう。恋愛は二者間のものであると同時に、特に結婚を見据えた段階においては、社会的なものでもある。ふたりの関係をひらいて、互いの親族や友人と、もっと話すべきだった。あのひとが頼りにしていたあのひとのおじいさんがまだ存命であったら、そのひとに相談できたら、なにか違ったかもしれないと、いまでも思う。