人間は変わるのか

あのひとは、おれが「ふつう」であることがいい、と言ってくれた。それは完全にポジティブな意味であった。そしてあのひとは、おれが「ふつうじゃない」ことこそがリスクだと言った。激太りしているのもアイドルにハマっていたことも、なにかふつうじゃないところ、過剰なものを抱えていることに原因があって、「人間はそうかんたんに変わらない」から、なにかのかたちでおれがまたいつかふつうじゃなくなるのではないかと言った。それはきっとそのとおりで、あのひとがおれをとてもよく理解してくれている証拠だと想う。でも人間は変わる。ひとりでいることが何の苦でもなくて、基本的に毎日楽しく生きてたおれが、あのひとのいない毎日に何も感じられなくなった。自分がこんなにも他者を求めるようになるとは想像もしなかった。だからもっと、人間が変われることをちゃんと伝えるべきだったんだと思う。すべては遅すぎるけど。