現実(よりもっと真実)

 濱口竜介監督『偶然と想像』をBunkamura ル・シネマで観る。
guzen-sozo.incline.life
 現代劇で男女の恋愛や結婚に関するものに触れたとき、あまりにダイレクトに自分のなかで消化できていない感情を刺激されて苦しいと感じることが最近多かった。それは物理的な苦しさで、呼吸が浅くなってしまったり、目眩がしたり、頭蓋骨の中で脳が膿んでいるような感覚だったりする。そんなこともあって以前ほど積極的に映画館に行かなくなっていたのだが(映画館で苦しくなると困るので)、この年末年始は仕事が一段落したこともあってボーっとしているだけでも苦しくなってしまうことに気づいたので、ただじっとしていたくないという理由でわりと映画館に行っている。
 この濱口竜介の「短編集」も、第1話が自分にとってかなりダイレクトにあのひとのことを思い出させる内容で、しかも「二年も前に終わった恋愛のせいで新しく人を好きになることができないなんて引きずりすぎじゃない?」みたいな内容の台詞があって殺されるのかと思ったのだけど、映画館のあちこちで自然な笑いが起こっていて、なんだかとても救われた気がしたのだった。映画館に行ってよかった。
 第2話が最高におもしろくて勇気づけられる、虚構と現実の関係に自己言及しているとも読める、大学教授兼作家の話。第3話は、おれができなかったことの話だった。この映画は自分にとってすごく大事なものになりそうな気がするからじっくり考えて何かを書き残しておきたい。ということをとりあえずぐるぐると考えていたらセルフ課題図書の進捗はゼロ。